伝統の味に挑む。「数の子(カズノコ)」の完璧な塩抜き

執筆者:

カテゴリ:

お正月や特別なハレの日に食卓にのぼる「数の子(カズノコ)」。

あの独特のポリポリとした素晴らしい食感を100%楽しむためには、調理の第一歩である「塩抜き」の工程がすべてを握っている。

実はこの塩抜き、簡単そうでいて非常に繊細なコントロールが必要な職人技なのだ。

完全に塩を抜きすぎてしまうと、数の子本来の旨味が抜けて苦味が出てしまい、逆に塩が残りすぎると塩辛くて食べられない。

ちょうど良い「ほんの少しの塩気」を残すバランスが求められる。

私流のやり方は、薄い塩水(ここがポイント。真水よりも塩水のほうが均一に抜ける)を使い、半日から一日かけて、様子を見ながら数回お水を交換していく方法だ。

途中で端を少しだけ千切って味見をし、塩加減をチェックする。

絶妙な塩梅になった瞬間に引き上げ、周りの薄い膜を指の腹で優しく、丁寧に剥き取っていく。

下処理が完了したら、出汁、醤油、みりん、鷹の爪を合わせた特製の漬け汁に浸し、冷蔵庫で一晩じっくりと味を馴染ませる。

翌日、美しい黄金色に染まった数の子をパキッと割り、鰹節を振っていただく。

あの小気味よい音が口の中で響くたび、日本の丁寧な食文化の素晴らしさを実感する。

手間暇を惜しまず、素材の良さを引き出す料理の楽しさは、一度知るとやみつきになる。