お正月や特別なハレの日に食卓にのぼる「数の子(カズノコ)」。
あの独特のポリポリとした素晴らしい食感を100%楽しむためには、調理の第一歩である「塩抜き」の工程がすべてを握っている。
実はこの塩抜き、簡単そうでいて非常に繊細なコントロールが必要な職人技なのだ。
完全に塩を抜きすぎてしまうと、数の子本来の旨味が抜けて苦味が出てしまい、逆に塩が残りすぎると塩辛くて食べられない。
ちょうど良い「ほんの少しの塩気」を残すバランスが求められる。
私流のやり方は、薄い塩水(ここがポイント。真水よりも塩水のほうが均一に抜ける)を使い、半日から一日かけて、様子を見ながら数回お水を交換していく方法だ。
途中で端を少しだけ千切って味見をし、塩加減をチェックする。
絶妙な塩梅になった瞬間に引き上げ、周りの薄い膜を指の腹で優しく、丁寧に剥き取っていく。
下処理が完了したら、出汁、醤油、みりん、鷹の爪を合わせた特製の漬け汁に浸し、冷蔵庫で一晩じっくりと味を馴染ませる。
翌日、美しい黄金色に染まった数の子をパキッと割り、鰹節を振っていただく。
あの小気味よい音が口の中で響くたび、日本の丁寧な食文化の素晴らしさを実感する。
手間暇を惜しまず、素材の良さを引き出す料理の楽しさは、一度知るとやみつきになる。